🚨 受注入力システム化の「落とし穴」:誰も使えないシステムになる前に
老舗企業様のDX推進において、まず直面するのが「現行業務のブラックボックス化」です。
特に長年使われているExcelベースの業務には要注意。
今回のクライアント様(老舗印刷会社)でも、既存の工程管理ツール「Exment」への受注入力システム化が進められていましたが、思わぬ壁にぶつかりました。
受注内容によるメッセージ送信のルール化の難しさ
当初の要望は「受注内容(印刷・製本・加工)に応じて、関係部署へ自動でメッセージを送信したい」というものでした。
しかし、深く掘り下げると問題点が浮上。
- 現場の紐づけがシステム上不明確: 「製本」と一口に言っても、第一工場と第二工場があり、システムがどの部署に紐づけるべきかを判断できません。
- プラグイン案は却下: 部署紐づけをカスタムプラグインで作成すると提案しましたが、別途費用と保守性の悪化を理由に却下されました。
「システム化のセオリー」と「現実の壁」
専務様との話し合いの中で、私はシステム化のセオリーをお伝えしました。
👤:本来なら、工程マスターや工程構成マスターを整備し、その進捗を工程進捗ファイルで管理するのがシステムのあるべき姿です。
しかし、このセオリーには大きな「現実の壁」がありました。
- マスターを整備できるのは専務のみ!
- お忙しい専務に新たな負荷をかけるのは非現実的。
この「押し問答」で1時間以上を費やしましたが、最終的には「現状のエクセルの問題点を分析し、現実的な落としどころを見つける」という、最も重要な結論に至りました。
誰も使えない高機能システムを作るより、現状の業務フローを活かした現実的なIT化を目指すことが、DX成功への近道です。
💬 コンサルタントの独り言 厳しい指摘をするのは神経を使いますが、「本当に稼働するか」という視点を持ち、専務・社長・現場の三者で現状を共有する場を設けることが、このシステムの生命線だと判断しました。
🚀 Googleフォームで実現する「かゆい所に手が届く」物流DX
一方で、別の部門から「物流の納品・納入受付」を改善したいという要望が舞い込みました。これはDXの「スモールスタート」に最適なテーマです!
アナログな受付業務の課題
現在、ドライバーが受付表に手書きし、入荷係が電話で各所に連絡するアナログなフローでした。
無料ツールで始める簡易受付システム
ここで提案したのが、GoogleフォームとGAS(Google Apps Script)を活用した簡易的な受付管理システムです。
| 項目 | 内容 | 💡 IT化のメリット |
| 受付方法 | フォームのURLをQRコードでスキャンし、ドライバー自身に入力してもらう | 手書き・電話対応の手間削減 |
| 入力内容 | 会社名、氏名、電話番号、品名、納入・納品 | データ化・集計が可能に |
| 通知機能 | 受付完了後、対象者に自動でメール送信(GAS利用) | 呼び出しの手間を削減 |
| ステータス管理 | 受付完了〜荷受け完了までの5段階で管理 | 進捗状況の可視化 |
無料版の壁と対策
Google Workspaceの無料アカウントでは、GASによるメール送信は「1日100通まで」という制限があります。※2025/11/25時点
💡 対策:1日の送信カウントをスプレッドシートで監視し、90通に達した時点でシステム管理者へ警告する仕組みを組み込むことで、サービスの停止を防ぎます。
次のステップへの展望
当初「モニターに待ち人数を表示したい」という要望もありましたが、これは工数オーバーと判断し、次ステップとして持ち越し、別途見積もりとしました。
まずは「受付と通知の自動化」という、最も現場が困っている「かゆい所」に手が届くIT化から始めるのが成功の秘訣です。
📌 まとめ:DXは「セオリー」と「現実」のバランス
今回の奮闘記で得られた教訓は、DX推進において「理想のセオリー」と「企業の現実」のバランスを取ることがいかに重要かということです。
- 脱Excelの壁: システムのセオリーを押し通すのではなく、現場の実態分析と関係者間の合意形成を最優先する。
- 物流DX: 大規模なシステムでなくても、無料ツール(Googleフォーム)を活用したスモールスタートで、確実な成果と停滞感の打破を目指す。
停滞していたDXが、この物流受付のIT化をきっかけに再び動き出しました。あなたの会社のDX推進も、まず一歩、小さな改善から始めてみませんか?


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